マリッジライフ・シミュレイション~鉄壁上司は妻を溺愛で溶かしたい~
あの時調子に乗って強請ったファーストキスも、唇ではなく額へだった。

「私は……」

勝手に口が開いて言葉が転がり出す。

「初めてのキスも…その先も……ちゃんと想い合っている相手としか、しません!」

言い終わる前に両腕に力を込めて、ググっと彼の胸を押し返した。
思ったよりも簡単に体は離れ、彼が大きく瞳を見開いて驚いている隙に、そこから逃げ出した。

履いたままだったパンプスを蹴散らすように脱いで、勢いよく廊下を走る。
そのままリビングを駆け抜けて自分の部屋に入り、勢いよくドアを閉めると鍵を掛けた。

そして真っ直ぐベッドにダイブし、頭から布団を被る。

この一時間ほどの間にあまりに色々なことが起こって、脳が情報処理しきれていない。

私は真っ赤になった顔と真っ白になった脳内を、どうにかしようとする努力を放棄して、そのまま瞳を閉じた。




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