マリッジライフ・シミュレイション~鉄壁上司は妻を溺愛で溶かしたい~
高柳さんは隣にいる私のことをじっと見下ろすと、突然わしゃわしゃと私の頭を乱暴に撫でた。

「わっ!……もうっ、何するんですか!?」

抗議の声を上げた私に高柳さんは「くくっ」と楽しげに肩を震わせて笑いながら

「いいデコだな」

「なっ!」

かき混ぜられた髪が乱れ、下ろしていた前髪が左右に上がっていた。
社会人になってからおでこを人前に晒したことがない。
地味に恥ずかしくて、慌てて髪を戻そうと当てた右手を高柳さんに掴まれた。

「隠すのか?」

「は、離してください」

早く前髪を下ろしたくて、手を頭に持って行こうとするが、逆に高柳さんの方へ引き寄せられる。

「そのままにしておいても可愛いぞ」

「かっ!?」

「大事な妻をこんな日に放っておけるわけないだろう?」

真っ赤になって絶句している私の耳元で彼は囁いた。

「一人にしない―――雪でもカミナリでも」

ふわり。額に温かく湿ったものが触れた。

空からはらりはらりと降ってくる氷の結晶が、私の熱い顔に当たってすぐに溶ける。
頬の上をすべり落ちる氷の冷たさを感じながら、まるで“あの日”の再現のように感じて――

「風邪引く前に中に入ろう」

そう言われたけれど私はすぐにその場から動くことが出来なかった。
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