マリッジライフ・シミュレイション~鉄壁上司は妻を溺愛で溶かしたい~
彼はそんな自分を知ってか知らずか、月曜日の朝っぱらのエレベーターの前で気軽に私を誘ってくる。

「そんな冷たいこと言わずに。あ、そうだ俺、インスタ映えする海鮮バル知ってるんです。今夜一緒に行きませんか?」

「週初めから飲まないから」

空いてない、とは言わない。空いていてもいなくても、はなから行く気はないのだ。インスタにも興味はない。――海鮮は好きだけど。

「じゃあ、今週末は、」

「……週末は予定があるの。というより、職場(ここ)でしか会わないって言ってるでしょ?」

周りの女性からの鋭い視線がチクチクと刺さってくる。

「つれないなぁ、雪華さんは。ま、それも魅力の一つなんですけどね」

「胡麻を()っても何も出ないわよ。あと、呼び方。次は返事しないわよ」

エレベーターのドアから視線を外さずに低く冷たくそう返した。

ああ、周りの女性たちの視線が痛い。

色々なことに気付かない振りをしてやり過ごしているうちに、ポンと音を立てエレベーターのドアが開いた。

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