マリッジライフ・シミュレイション~鉄壁上司は妻を溺愛で溶かしたい~
 鳴りやまない鼓動をどうにかなだめながら、再び横になった彼の肩に布団を掛ける。
 そのとき、ふと思い出した。

『大好きな雪華、早く元気になあれ』

 幼い頃熱を出した私に、母はよくそう言いながら頭を撫でてくれた。大好きなおまじないだった。

 魔法の手みたいで、そうされるとなんだかすっと体が楽になった気がしてたっけ……。

 気づいたら手が伸びていた。

「大好きな滉太さん、早く元気になあれ」

 ゆっくりと彼の頭を撫でる。
 滉太さんは一瞬だけ驚いた顔をした後、ふわりと微笑んだ。

「ありがとう、雪華」

 それから彼が眠るまでの間、何度も頭を撫で続けた。


 翌日、すっかり元気になった滉太さんに“有言実行”とばかりにさんざん甘く(とろ)かされ、魔法の効力の絶大さに驚いたことは言うまでもない。




【了】
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