マリッジライフ・シミュレイション~鉄壁上司は妻を溺愛で溶かしたい~
レンジで解凍した冷凍枝豆と買い置きのチーカマ。それが今日の夕飯。
足りなければ冷凍ご飯をチンすればいい。

いつも大抵家での夕飯はこんなもの。はっきり言って料理は不得手。
家事全般自体あまり得意ではないけれど、仕事で疲れているのに汚い部屋に帰るのは嫌なので、部屋はそこそこの状態を保つようにしている。
というより“物を置かなければ片付けなくていい”という持論から、あまり物がない。“シンプルイズベスト”といえば聞こえはいいが、“殺風景”と言われたらそれまでだ。

家事の中でも一番苦手なのは料理で、正直“食べる”という行為にあまり興味はない。
お酒は好きだけどつまみが無くても飲めるタイプだし、空腹なのもあまり気にならない。

冷蔵庫からよく冷えたビールの缶を取り出して、定位置に戻るとプルタブを開ける。プッシュっという気持ちの良い音が部屋に響いた。

さっきは勢いに任せて缶のまま飲んでいたが、今度はきちんとグラスに注ぐ。本来ならビールは泡と共に味わうのが私のポリシーだ。

ビール会社に勤めているくらいなので、自社製品が一番好きだけど、他社の新製品も必ずチェックするし、今流行のクラフトビールも飲む。なんだかんだで、ビールが好きなのだ。

「ああっもうっ!!」

大好きなビールを飲んでも全然解消されない気分に、私はとうとう音を上げた。
こんな時はこれに限る、とスマホを手に取る。

【HELP ME!】

すばやくそう打ち送信した後、私はグラスのビールをもう一度あおった。




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