マリッジライフ・シミュレイション~鉄壁上司は妻を溺愛で溶かしたい~
着席した後、私たちの自己紹介を、それぞれの隣に座った遠山夫妻が簡単にしてくれた。
それを聞きながら、

(ああ、これってもしかしたら“お見合い”なのか)

と今更ながら気が付く。

(知人の紹介とお見合いは、釣書きがあるかどうかの違いなのかしら……)

そんなどうでも良いことまで考えてしまうのは、完全なる現実逃避。本当なら体ごとこの場から逃げ出してしまいたい。

うっすらと愛想笑いを浮かべ相槌を打ちながら、目の前に座る彼を盗み見る。
就職してからのことは知らないが、それ以前の二年間。彼が大学院生だったころを私は知っている。
なぜなら、彼は私が初めて好きになったひと。

そして、初めて振られたひと―――だからだ。





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