君の子守唄
ホテルから連絡もなく、途方にくれてると

着信音が聞こえた。

「寧々は?!」

「バカヤロウ!!」

電話の相手は、洋介だ。

洋介の怒鳴り声に、寧々が無事だと悟った。

洋介が怒ると言うことは………会えてるのだろう。

ホッと息を吐くと……………涙が溢れた。

「寧々は?」

長年のつき合いだけあり

「泣くほど心配なら、ちゃんと捕まえとけ。
次に泣かせたら、承知しないからな。
早くホテルに帰って来い。」と笑って、電話が切れた。

……………………寧々、ごめん。

正直、何に泣いたのか……………分かってない。

けど。

俺の言葉で、傷つけたのは分かる。

あんなに泣いた姿を見たのって…………

小学一年の冬以来だな。

いつもは、施設の保護司さんが迎えに来ると

さっさと荷物をまとめて、帰る用意をしていた。

その日も「お母さん、施設にこのマフラーを持って行って良い?」と

おばさんに聞いていた。

それは、俺がクリスマスに贈ったカシミアのマフラーだ。

母親の所に帰る前に、1度施設で親子で生活し

大丈夫だと判断されると親子で生活を始める。

ただ、施設は贅沢品を持っていけない為おばさんが渋った。

「施設の生活が終わったら、お母さんが届けてあげる。」と

だけど何度も施設と洋介のウチと

母親の生活を繰り返していた寧々は………

施設を出るとき洋介達に連絡がないことも

次に何処で生活するかも、知らされないことを知っていた。

『次はないかもしれない』
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