世界で一番美しいプレゼント
「おはよう、ごめんなさい」

風香は涙を拭い、ニコリと微笑む。風香のその顔を見て、父と祖父母は「よかった」と安心したように笑った。

風香はよく過去の悪夢にうなされ、こうして過呼吸を起こしてしまう。ひどい時には気を失い、救急車で搬送されたこともあるほどだ。しかし、過呼吸は精神的なことなので、治療薬があるわけではない。

風香の両親は、風香が小学生の頃に離婚した。風香は母とあまり仲が良くなく、何度も母から怒鳴られていた。そのためか、風香は父に引き取られた。今では、父と祖父母と暮らしている。

母は風香を自分の理想の娘にしようと、英会話やピアノなどたくさんの習い事をさせ、勉強にも力を入れていた。しかし、風香は母の期待に応えることはできず、その度に暴言を吐かれていたのだ。

『消えろ!!』

『死ね!!』

そう言われ続け、風香は過呼吸を起こすようになってしまった。そして、中学三年生になった今でもその悪夢に囚われている。

「風ちゃん、今日もこころの家に行くの?」

制服に着替え、髪を整えた風香に祖母が風香のぶんの味噌汁を入れながら訊ねる。風香は「そうする」と頷いた。
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