ラヴシークレットルーム Ⅲ お医者さんとの秘密な溺愛生活
Reina's  eye ケース11:未熟な新妻セラピスト

【Reina's  eye ケース11:未熟な新妻セラピスト】




ナオフミさんとのオトナな関係により戸惑うようになったきっかけ。

それは美咲先生からカウンセリング依頼があった日の午後の出来事だった。



トン、トン


カウンセリングルームのドアをゆっくりと叩く音が聴こえてきた。

ここ最近の私は、この瞬間
一番神経を研ぎ澄ましている。

『ハイ、、、どうぞお入り下さい。』

ドアの向こう側にいる人へ
カウンセリングルームに入りやすい雰囲気が伝わるように丁寧にその言葉を紡ぐ。


そして、ゆっくりと引き戸を開け、中に入っていただくように促し
そっと口元を緩める。




「・・・・・あの、うっ、、、、、、うっ、、、、、う~」


開いたドアの向こう側で立ち止まったまま泣き崩れた女性。

どうやら美咲先生からオーダーのあった患者さん。
正確に言うとクライアント。


その人は渡辺さんという30代の女性
突然泣き出したら
普通はどうしたんだろう?と感じると思う

でも、その状況を理解できる
私も過去にそういう経験をしたことがあるから

自分の気持ちを抑えなくてもいい空間だと感じた時
涙を自然に出てきてしまう
そんな経験


だから
涙を流すことに集中してもらうために敢えて声をかけるのをやめた。



「すみません、私、、、、、、、泣いたりなんかして・・・・」

『泣いてもいいんですよ・・・』



自己紹介とか挨拶とか
確かに大切なことだけど

今、この瞬間はいらない


今大切なのは、自分の感情を自分の中に閉じ込めないこと

そうすれば
今ここから
再出発できるんだから



私も以前、
現在の義父の・・・東京の日詠先生がそのきっかけを作ってくれた

まだ自分のお腹の中にいた祐希に心臓病があることがわかり東京の大学病院に転院した私
ただただ不安な気持ちで心臓血管外科の診察室の扉を開けたその瞬間
自然に涙が出た

そこに外科医として私を
目を細めて穏やかにみつめて下さった東京の日詠先生は
そんな私を無条件で受け入れてくれた

それが私の
母親としての新たな出発の時だった


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