ラヴシークレットルーム Ⅲ お医者さんとの秘密な溺愛生活



双胎間輸血症候群の赤ちゃんは
無事に産まれてくるかわからないだけでなく

もし産まれてきたとしても
脳や神経などに後遺症を持って産まれてくる恐れもある


それにただでさえ
双子の妊娠というものは
母体への負担が大きいのだから

本当にこのまま産むという選択をしてもよいのか?という想いを
妊婦さんやご家族が抱いても無理はない


『自分ひとりでは・・・・、』


産むのか?
産まないのか?
産んだらどうなるのか?
産まなかったら後悔しないのか?

きっといろいろな想いがご家族内でも交錯するに違いない

今まで色々な妊婦さんやそのご家族の想いに
気持ちを傾けるように心がけた
今回ももちろんそうしたいと思っている


でも

『どうしてもフォローしきれません。』


残念だけれど
自分が男である以上
妊婦さんの気持ちを完全に理解することは
どう頑張っても限界があるに違いない


だから俺は
自分ひとりでこの妊婦さんやご家族を抱え込むのは正しいことだと思えなかった


「私達、臨床心理の関与が必要なのね?」

『ええ。しかも、特定の人物が・・・・』


すぐにその人の名前を口にすることができなかった。

おそらく反対される
俺が考えていることは

そう思ったから。

でもそんな俺の考えも再び早川室長によって

「伶菜さんなのね?」

あっさりと見抜かれた。


「反対よ。まだ新人よ。」

そしてはっきりと反対された。


『わかってます。』

「福ちゃんからも聞いてるわよ。昨日のこと。」

『・・・・・・・』


こんなとこまで昨日のことが知れ渡っていたことに驚きを隠せなかった。

それだけでなく
俺と奥野さんとの間に起こった出来事が
いかに自分の不手際であったのかも
痛感せずにはいられなかった。


「多分、伶菜さんもグラグラに揺れてるわよ。そんな彼女にこんな難しい症例は無理よ。それに、クライアントを私的利用しているみたいで許せない。」

『・・・・・・・・』


伶菜の抱いている不安を払拭させる
俺がそのためにもこの症例を彼女に関わらせようとしていることまで見抜いている早川室長。
彼女が言っていることは正しいと思った。


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