ラヴシークレットルーム Ⅲ お医者さんとの秘密な溺愛生活
Hiei's eye カルテ20:suspect・・・?


【Hiei's eye カルテ20:suspect・・・?】



森村に忠告されたあの時からもう2ヶ月ぐらい時が流れていたと思う。


「またメロンパン、食べてるの?」

『昨日の夜、帰れなかったんです。で、朝食を食べ損ねたんで。』

「そういえば、美咲先生、ダウンしたんだったわね。どうしたのよ。」

『感染性胃腸炎。』


日勤で午後7時には勤務を終えるはずだった昨日。
体調不良で急遽休んだ美咲のかわりにそのまま朝まで勤務続行状態。
昨晩から今朝方にかけての分娩ラッシュでほとんど寝ずに迎えた今朝。


午前7時半過ぎ
陣痛室に何人かの妊婦さんはいるものの、分娩室が空っぽになったすきに医局へやってきて今に至る。

俺はデスク用チェアの背にどっしりともたれかかりながら
これでやっとゆっくりできると息をついたところだった。


「大変ね。で、509号室の横山さん。そろそろ大部屋に移ってもらっていい?」

産科病棟看護師長の福本さんが疲労気味の表情を隠すことなく病棟部屋割り図をはさんだバインダーを片手に現れた。

『昨日、オペしたばかりだけど?』

「どうしても個室空けておきたいの。せめて2人部屋へ移動するとかでなんとかならない?」

『わかりました。横山さんに話してみます。』


ニヤリ。
福本さんはしてやったりという顔をのぞかせた。


「助かるわ、さすが産科ドクターの絶対的エース。」

『エースなんて・・俺はそういう器じゃないですよ。』

「よく言うわよ。例のTTTS症例の手術・・・・“県内で初めての手術症例”ってことで新聞に載ってたじゃない。産科部長なんか自分がやりましたみたいな顔して受け答えしていたらしいわよ~。なんで、自分で取材を受けなかったの?」


さっきまでは相談材料として福本さんが手にしていたバインダーは今となっては俺の腕をつつく武器にしか見えない
結構鋭角に突き刺さってくるそれのせいもあってつい顔を歪めた。


『まだ一症例しか成功してませんから。それに・・』

「それに?」

福本さんのバインダーを動かす手が止まる。
俺が更に何を言い出すのか気になった反応らしく
言い逃げするなよという空気までも伝わってきていた。

福本さんから逃げられないことを知っている俺は

『取材受ける暇があったら、家帰って、朝飯食べたい・・味噌汁飲みたい・・・』

思うがまま正直に言葉を紡いだ。


それなのに


バコッ!!!!!!!!!
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