ラヴシークレットルーム Ⅲ お医者さんとの秘密な溺愛生活


その後、私はナオフミさんから指示された産科の患者さんのカウンセリングを行ったり、カルテの記載をしたりして忙しく過ごした。


カウンセリングを行ったナオフミさんの患者さんは17才の女子高校生
彼女は付き合っている彼との性交渉で妊娠し、中絶するか散々迷った末に出産することにしたが、出産に対する漠然とした不安に襲われて悩んでいるらしかった
ナオフミさんからは電話で
“ゆっくりでいいから漠然としている不安を一緒に整理してあげて欲しい”
との指示があった

彼の言葉通り、私は彼女のペースに合わせてゆっくりと話に耳を傾けた。
途中、彼女は涙を流したりもしたが、帰り際には
“高梨先生、また話、聞いてくれる?”と言ってくれた。


前田先生の患者さんに続き、ナオフミさんの患者さんからも頼りにされたコトが嬉しかったこの日の私。

産科病棟から戻ってきたばかりの時のモヤモヤした気持ちは
その後、患者さん達からの嬉しい言葉を耳にしたことによって
業務終了時にはスッキリとした気持ちに変化していた。



きっと自分のやるべきコトをちゃんとやることができたという達成感が大きかったからだろう

『さ、祐希を迎えに行って、ウチに帰ろうっと♪』

鼻歌交じりに着替えを行い、ウチに帰る準備をし始めた終業後のゴキゲンな私。



昼休み直後の私は
ナオフミさんを誰かにとられてしまうような不安を抱き、産科病棟から逃げるようにして帰ってきたのに
けれどもその後、業務遂行上で得られた“達成感”という魔法によって
その不安はいつの間にか和らげられていた

それだけではなく

こうやってコツコツ実績を積んでいけば、いつかは一人前の臨床心理士として
そして
ナオフミさんのパートナーとして
周囲にもちゃんと自分を認めてもらえるハズだ・・・といい手ごたえまでも感じていた

だから、ウチへ帰ってナオフミさんと顔を合わせてしまうことに対する躊躇いもなくなっていた



『今日はカルパッチョ♪楽しみ~。私も何か作ってあげようかな~!』


でも
こんな私だったから・・見逃してしまった

“あの人”から出されていた・・・決して見落としてはいけなかったサインを・・・
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