ラヴシークレットルーム Ⅲ お医者さんとの秘密な溺愛生活
Reina's eye ケース24:セカイでイチバン



【Reina's eye ケース24:セカイでイチバン】



自宅で破水してしまった私は腰まわりをバスタオルで覆った姿で病院へ向かった。
後部座席が汚れてしまうかもしれないと気にする私にタクシーの運転手さんは“大丈夫だよ”と励ましてくれた。
それだけでなく、産科病棟受付まで車椅子を押しながら付き添ってくれた。


『あの、ありがとうございます。コレ、お礼というものでもないんですが・・・』

「おっ、いいのかい?ありがとう。頑張れよ。きっとお嬢さんに似たカワイイ子が産まれるからな~♪」

『ハイ♪』

「それじゃ~。ご利用ありがとうございました。」



気前のいい運転手さんは手渡したイチゴミルク味の飴を頭の上に掲げながらニッと笑い、玄関方向へ戻って行った。


祐希を出産した時は帝王切開予定で事前に入院していたからこんなに慌しくはなかった。
でも、今回は自然の流れに乗っての出産予定。
妊娠に関する本を読んだり、奥野先生や福本さんに話を聞きながら
自分でも破水した時のことを考えていた。


『いよいよかな~。陣痛ってどれくらい痛いんだろう?すいかを鼻の穴に入れるぐらいって本当かな?』


産科病棟受付前で車椅子に乗ったまま待っていた。

『赤ちゃん・・・祐希の弟かな?妹かな?』

お腹に手をあてて、もうすぐ会えるはずの赤ちゃんに想いを馳せる。


「日詠伶菜さんですね。」

『ハイ。』

「産科病棟師長の竹中です。破水したって連絡を受けていますが、出血は?」

『出血はしてないです。』


慌てた様子の竹中さんに落ち着いて返答した。
そして、車椅子から立ち上がり、竹中さんの後ろを歩いて陣痛室へ入り、ベッドに移った後、準備されていた病衣へ着替えた。


「よかった。でも、感染予防のためにも陣痛室にいてもらうわね。陣痛がなかなかつかないようだったら、促進剤を使うことになるかもしれないから、また様子を教えてね。」

『ハイ。』


じわりと痛みがあるお腹を押さえながら車椅子から立ち上がり、竹中さんの後ろを歩いて陣痛室へ入った。
そして、ベッドに移った後、準備されていた病衣へ着替えた。



薄いカーテンで間仕切りされている陣痛室。
右隣は人の気配がなかったが
左隣からは “痛い!!!” “背中さすって” といううなり声の混じった声が聞こえてきた。


『福本さんに保育園へ迎えに行ってもらうようにお願いしたけど、祐希、びっくりするかな~。』

ひとりで過ごすこの時間が不安にならないように他事を考えるようにした。



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