ラヴシークレットルーム Ⅲ お医者さんとの秘密な溺愛生活


ナオフミさんはウチへ仕事を持ち込まないどころか、仕事関連の本とかも一切ここには置いてなくて

置いてあるのは
天体観測や海洋生物などが掲載されている科学雑誌だったり
“地球の歩み方”という世界旅雑誌だったり

私達は仕事の話も家ではほとんどしない
しても勤務日程の話ぐらいで

職場では遺伝相談チームの上司と部下
産科も遺伝疾患を扱う診療科なので、ナオフミさんもチームの一員であり
私の上司のひとりでもある
だからお互いに暗黙の了解で、仕事を家には持ち込んでいない

家では、立場とか関係なく素顔のままで向き合いたいから
きっとナオフミさんも同じ想いなんだと思う

でも、仕事が順調な私はもっと頑張りたいと思いが強くて、この日は本を持ち帰ってきてしまった。
それぐらい自分の仕事に意欲的になり始めていた私だったけれど・・・



「高梨さんですね?」


翌朝、カウンセリングルームの前でスーツをビシッと着こなした男の人に声をかけられた。


『・・・・ええ。そうです、、、けど。』


その人に見覚えがなくて、そうとしか返事ができなかった。



「病院監査室の江草と申します。今からあなたにお話を伺いたいと思います。室長の早川さんには了承を取っていますので、今から管理棟までご一緒願えますか?」

目の前にいる江草さんという男の人の表情も、そう語りかける口調も
あまりにも険しくて

『・・・・・はい。』

私は蚊の鳴くような声で返事するしかなかった。
なぜ、監査室の人が私に話を聞きたいのかという疑問を口にすることができないまま。

その瞬間、前夜、ココロがほっこりと温まった感覚が・・・・あっという間に掻き消されてしまうような気がした。

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