僕はペットで離婚を決めました


 久しぶりに美奈がバイトがない日。


 謙が仕事から帰って来ると美奈が

「謙ちゃん、友達が犬が飼えなくなってしまって。女の子なんだけど、もらうことにしたから」

「はぁ? 」

 もらう事にした? 

 相談じゃなく、もう決めて来たの? 

 事後報告? 


 なんじゃそれは!!!

 謙の中でプチッと何かが切れた。


「おい、それって。もう一匹を飼う事を決めたって事か? 」


 違うと言ってくれと思いながら謙が尋ねると、美奈は頷いた。


「うん、決めた事だよ」


 おい、おい、おい、おい、おーーーーい!!

 決めた事だと?


「お前、本気か? 俺言ったよな? もう一匹飼うなら、俺は出て行くって」

「うん」

「俺が出て行くって事は、お前と離婚するって事だ。判るか? 」

「うん。仕方ないね」


 仕方ない? 


「それは、俺が出て行く事が仕方ないって事か? 」

 謙が尋ねると美奈は。

「だって、もう決まった事だから」


 終わった。

 俺は犬に負けたのか? 

 犬の為に、俺が出て行けって事になって仕方ないと言われている…。



「分かった。もういい、明日にでも離婚用紙もらってくるから」


 謙はそれだけ言って和室にこもった。


 美奈は特に弁解もしないで、さっさと小太郎と一緒に寝室へ行ってしまった。



 ペットを飼う事で夫婦間が破局。

 しかもレスにまでなってしまった! 

 なんなんだ? これって…。


 謙は悲しいやら、空しいやらで気持ちの整理がつかなかった。




 翌日。

 謙は言った通り離婚用紙をもらってきてサインした。

 美奈も素直にサインした。


 これを出せばもう終わりだ。




 仕事の合間に不動産に行って、新しい住まいを探した謙は、運よく駅近くに見つけた1LDK。
 
 家賃もそれほど高くなく、駅から便利ペット不可というのが謙には何よりいい。



 
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