Sync.〜会社の同期に愛されすぎています〜

金城心春

私は、自分の家族のことが世界で一番理解できない。

物心がついた頃から冷めきった家の中で生活していた。大きな庭のある都内の大豪邸で大型犬を飼い、日中はお手伝いさんがいて常に家は清潔に保たれて、美味しい料理が振舞われて、欲しいものはなんでも手に入った。

それでも、いつも寂しかった。

父は若くして会社の社長であり、家にはほとんど帰らない。
だから、私は父親はいないものだと思っていた。
母は専業主婦でありながらいつも疲れ切った顔をしていて時折、ヒステリックを起こす。

「あんなたなんて生まなければよかったのに」
「あんな人と結婚しなければよかった」
私と二人きりになり、スイッチが入った時にずっとガミガミと言い続けるその時間が苦痛で仕方がなかった。
誰しもが、「美人で優しいお母さんだね」と私に言うから誰にも言えなかった。

そんな母は私が高校生の時に、突然病で倒れて死んだ。
心の底で「よかった」と思った自分が恐ろしかった。憎かった。
私が母を嫌いだったから死んだんだ。

大きな家に一人で取り残された私は、男に依存した。
体も心も満たされる気がしたから。
それは大学生になっても変わらなかった。

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