Sync.〜会社の同期に愛されすぎています〜
私はカメレオンだった。
小学生の時、一番親友だと思っていた子に突然無視された。

理由は、大人になってから知った。
その子が好きだった男の子が私を好きだったから。
別に私は好意なんてなくて、一緒になってその恋の行く末を楽しみにしていたのに残酷だった。
そしてそれを機に仲間はずれにされて、一人でいることが多かった。

このままではいけないと人に合わせるようになった中学は寂しくなかった。
休み時間にトイレに行くのも一人ではないし、移動教室も一人ではない。
でも、とてつもないぐらいに疲れた。

高校生の時は「ギャルになりきれていないギャル」だった。
いつも実年齢以上に年上に見えて、身長も165㎝と女子の中では大きめで、わりかしくっきりした目鼻立ちの私は化粧を少しするだけですぐに「ケバく」なれた。周りに合わせることには慣れっこで自分を偽ることも得意だった。
興味のないギャル雑誌をみてはメイクの研究やヘアアレンジをしてみたり、朝友達に会った時には必ずどこかを褒めてみたり、流行は常に敏感に、恋愛もしてるふり。
もし仮に私が恋をして、それが友達の好きな人だったとしたら今までの繕いが水の泡。
そして私のことを好きにさせても行けない。彼女たちが気にかける男子とは目を合わせないし必要最低限の会話もしなかった。

真面目を嫌う彼女たちを、真面目に生きてきた両親は毛嫌いした。
友達を失って一人になるのはもう嫌だからギャルでいることはやめなかった。
今思えばとても馬鹿らしいけれど。

派手な髪も化粧も辞めない私に両親が、親の指定する大学へ行けば何も言わないと言った。
もし合格できなければ、田舎のじいちゃんばあちゃんのところへ行き田んぼの手伝いをしろという半ば脅しの状態で真面目に受験勉強に取り組んだ。
当然、私の周りはバイトと遊びを繰り返しているような子達だから勉強とは無縁でいかに低い点数を出すかを競っていて、教室で勉強をしていたり本を読んでいる子をバカにしていた。

「勉強全然していない」という会話に合わせながらこっそり勉強をしていた。
勉強をしていたら、また仲間はずれにされてしまう。


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