Bloody wolf
「無駄に顔を晒す必要はねぇ。味方だけじゃなく敵にも見られる事があるからな」

そう告げれば、

「だよねぇ。無駄に顔を広めたくないもん」

頷いて笑った響。


ヤバいだろ、んな顔して笑うなよ。

ドキッとした事に気付かれねぇように、俺は視線を遠くへと向ける。


あ~マジでこれなんだよ。

思春期の中坊かよ。


俺にとっての初めての恋愛は、色んな物をもたらしてくれる。

響が俺と同じ気持ちに早くなってくれねぇかと、そんな希望を抱いた。



「晴成、耳赤くね?」

余計なことに気付くな、瑠偉。


「ああ"?」

鋭く睨み付けて誤魔化した。

うぜぇ、マジでうぜぇ。


「あ、そろそろ帰らなきゃ」

響がスマホで時間を確認して立ち上がる。

時刻はもう夜中の12時を指している。


「えぇ~もう帰っちゃうのぉ」

光希が残念そうに眉を下げる。


「ん、帰る。明日も学校だもん」

当たり前でしょ、と言う顔の響に瑠偉じゃなく秋道が慌てた。


「ああ、待ってください。顔合わせだけしてください。すぐに呼びます」

少し早口で言うとスマホを耳に当てた秋道。


「分かった。早くね」

本当、マイペースだよな、響。

つうか、俺とあんまり喋ってねぇよな。

瑠偉達の相手ばっかりじゃねぇかよ。


こんなんで距離を縮められのかよ。

先が長いことを暗示してる気がして仕方ねぇ。


秋道が慌てて呼んだ2人がやって来ると、響は簡素な挨拶を交わして帰っていった。

もちろん総長車で送って行ったのだが、これと言って会話も弾まず。

俺は1人が、やるせない気持ちをもて余したのだった。




ーendー
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