Bloody wolf
「考える余地なんて全くない。私は君を知らないし、君も私を知らないでしょ?」

なのに、好きだなんて軽々しく言わないで欲しい。


「うん。だから、これから知って欲しい」

「ごめん、無理」

「じゃあ、こうしよう。これからお互いの事を話していこうよ」

なにが、じゃあよ。

この前向きすぎる彼を、誰か何とかしてよ。

助けを求めて千里に視線を向けたら、苦笑いを返された。

ダメだ、助っ人にならない。


「あのね、聞いてた? 無理なの」

強い口調で言う。


「僕も諦めるの無理だから」

爽やかな少年は、綺麗に笑う。

及川君は、多分イケメンの部類に入るんだろうな。

私にはどうでも良いことだけど。


「私の何を知って好きだとか言うのか知らないけど。私、人を思う気持ちが一番信じらんないんだよね。だから、こう言うの止めて迷惑」

抑揚のない声で淡々と話して、及川君に背を向けた。

話しててもきっと押し問答が続くだけだ。


「あ、待って、篠宮さん」

背中に追いすがる及川君の声を無視して歩き出す。

パタパタと後ろから聞こえてきたの千里の足音。


酷い女だって嫌いになってくれればいい。

明るい太陽の下が似合いそうな彼に、私は似合わないよ。

今度は、自分に合う可愛い彼女が見つかると良いのにね? 他人事の様に思いながら廊下を進んだ。


周囲から突き刺さる視線に、ジロリと視線を返す。

数人の女の子達がこちらを睨み付けていた。


なんなのよ、もう。

こんな敵意向けられる様なことしてないけど。

苛立ちを隠さずに、冷たい視線で一人一人の顔を認識するように見据えていく。


慌てて視線を逸らしていくなら、初めから睨んでこなきゃ良いんだ。

本当、もう・・・なんなの。




「響ちゃん、ごめん」

私が躓いたりしなきゃ・・・申し訳なさそうに眉を下げたのは追い付いてきた千里。

「いいよ、仕方ないし」

今回はたまたま避けられなかっただけで、入学して何度か告白は受けてるし。

さっきみたいに食い下がられたことは無いけど。


冷たくあしらったら、大抵諦めてくれるんだ。

及川君は、相当イレギュラー。


「だいぶ目立ってたね」

「あいつ、叫んでたからね」

本当、面倒なことをしてくれた。

さっきから、あちこちから視線刺さってるんだよ。
< 38 / 142 >

この作品をシェア

pagetop