Bloody wolf
嘘ついてごめんね。


どうしても、ウルフとは無関係だと広めたいんだよね。

じゃないと絶対に面倒ごとに巻き込まれるから。


安心したように顔を緩めた2人に、胸の奥がちくんとした。


何か聞きたそうにしてるクラスメートとは目を合わせないまま、再び窓の外へと顔を向けると千里と及川君は、私の返事を疑うことなく自分の席へと戻っていった。


狡いなぁ、私。

そう思いながらも、これで良かったんだと心に言い聞かせた。


チャイムが鳴り先生が来ると最終日のテストが始まった。

今回の課目も山を張った所が出ていて、すらすらと進んだ。


休み時間の度に、他の学級や学年から私を見に来る女子がいて、憂鬱な気分になっていく。

俯せて寝た振りをしてやり過ごすものの、こう何人もだと正直疲れる。


動物園の動物じゃないんだから、無遠慮に視線を向けるのは止めて欲しい。

悪夢のような1日はこうして過ぎ去ろうとしていた。



晴成と秋道からは、三時間目が始まる前に状況はどうかと、心配するメールが来ていた。

何とかやり過ごせてると伝えて会話を終えたのはついさっき。

困ったことが起こったら2年の肥後(ひご)と言う男子を訪ねるように言われたけど、そんな事をしたら悪化するだけだと断った。


肥後君はきっとウルフのメンバーなんだろうと予測できるし、そんな彼に関われば私のついた嘘が無駄になる気がした。



「響、私、今日は先生の手伝いがあるから、一緒に帰れないわ」

帰り支度を始めてると、近寄ってきた千里が申し訳なさそうに言った。


クラス委員の千里は、上手く先生に使われてるのね。

大変だな・・・と他人事のように思いながらも頷いた。


「了解。じゃあ先に帰るね」

鞄を肩に担いだ。


「また来週ね」

「ん」

ヒラヒラと手を振って歩き出す。


「篠宮さん、またね」

今日からサッカー部が始まると言っていた及川君がニカッと笑って大きく手を振る。

相変わらず爽やかだな。


軽く手を上げて、帰宅する生徒に交じって教室を後にした。


廊下に出ると、テストが終わってホッとした顔の生徒があちこちでグループを作っていた。

遊びにいく相談をしてるんだろうな。


私は立ち止まることなく、生徒達の間を縫うように進んだ。
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