Bloody wolf
「あれ、この二台のバイクだけ違うんだね」

三台の族車と並んだビッグスクーターを指足した響に、

「ああ。俺と秋道は暴走の時にバイクに乗らねぇからな」

と答える。


「へぇ、だから違うのね」

「ああ。この黒いビッグスクーターが俺の。白いのが秋道だ」

「ふ~ん」

「反応薄すぎだろ」

「だって、バイクってよく分からないもん」

「ククク、本当ブレねぇなぁ」

さっきの苛立ちなんて、響と話してると吹き飛んじまうな。


「ブレないとか、意味わかんないけどね」

「ククク、まぁいい。俺の後ろ乗るだろ?」

どさくさに紛れて誘っちまうことにした。


「えぇ~晴、狡いじゃん」

「そうだそうだ!」

「じゃん拳だろ」

瑠偉が叫ぶと、光希がそれに同意して、豪がじゃん拳まで言い出した。


「はぁ? ふざけんなよ」

こいつら、本当、勘弁しろよな。

ここは普通に、俺に譲れよ。



「別に安全運転してくれるなら、誰でもいいわ。下らないことで揉めないでね」

さらっとそんな事を言う響は、1人だけ冷静だ。

「本当、子供のようですね」

ああ、もう1人いたよ、冷静な奴が。


「秋道の後ろに乗ろうかな」

「ええ、俺は構いませんよ」

待て待て、2人で決めてんじゃねぇ。


「秋道、抜け駆けすんな」

苛立ちながら睨み付ける。


「俺はそんなつもりありませんよ」

涼しげにそう返す秋道。


「晴成、そんな機嫌悪くなるなら行かなくてもいいけど」

やべぇ、響の機嫌が俺より悪くなってる。

「いや、待て。別に機嫌なんて悪くなってねぇし」

焦って言い訳する俺を可哀想な目で瑠偉達が見てくるが、今はそんなことを気にしてらんねぇ。


「響さん、今回は晴成のバイクに乗ってやってください。瑠偉達のバイクより乗りやすいですしね」

「まぁ、いいけど」

秋道の提案に頷いた響は、仕方ないって顔で俺を見てた。


後ろに響を乗せることが出来そうだが、俺、カッコ悪くねぇか?

やるせねぇ気持ちを抱えつつも、俺はバイクに跨がった。


「響さん、こちらを被ってくださいね」

「どうも」

響は秋道からヘルメットを受け取ると、頭からそれを被ろうとする。


それが不器用すぎて可愛い。

ヤバイな。

なんでも、そつなくこなしそうな響の一面にやられた。
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