いつか、きっと。
一人で友也の事を考えているときは、無意識に唇を触ってしまう。

この唇に触れた友也の唇の感触は今でもハッキリと思い出すことができるほど、記憶に新しい。

友也はもう忘れてしまったのかな?

あの小学生最後のクリスマスイブの日のファーストキス。

あれは単なる偶然だったのか。

それとも友也の意思でされたものだったのか。

本人に聞いてみたいけど、聞けない。

私は意気地無しだ。




そんな風につかず離れずの距離を保っていた私と友也に、またしても不可解な事件が起きた。

それは、中学生生活最重要項目と言っても過言ではないあのイベント。

修学旅行の夜……。

行先は、広島・山口で二泊三日だ。

一日目に広島の平和公園や原爆ドーム、厳島神社の見学。

二日目は山口に移動して、秋芳洞や松下村塾を見て回った。

二日目の山口での夜は翌日の予定になっている、福岡のスペースワールドの話題でみんな盛り上がっているようだった。

「なんかさ、少なかと思わん?有紀と美加子は何処に行ったと?」

夕食の後、お風呂に入って部屋でくつろいでたけど、五人の部屋なのに三人しかいない。

「あ、えっとね。なんか約束しとるけんって、出て行ったよ」

あーそうか、そういうことか。

修学旅行と言えば、みんなソワソワしてたよね。

夜の自由時間が告白のチャンスだって。

部屋に残った三人、京子と真実と私。

浮いた噂とは無関係な私たち……。

シーンと黙りこくった時にドアがノックされた。

先生の見回りかもしれない。

あの二人がいないのをどう誤魔化そうかと考えながらドアを開けた。

「はーい」

そこに立っていたのは友也だった。

「あれ、友也。先生かと思ったばい!」

「あんさ、よかったら俺たちの部屋に遊びに来んね。みんな結構部屋移動して遊びよるごたるけん。明日美たちなら多分部屋におるやろうと思ったっさね」

ふんだ!どうせ私たち暇やったけどさ。

せっかく呼びに来てくれたし、お菓子持って友也たちの部屋に遊びに行った。


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