課長の瞳で凍死します ~羽村の受難~
 本当は、生まれて七日目のお七夜までには名前を決めなければならないのだが。

 真湖の母親のインフルエンザや、結構最近まで、つわりがあった真湖の体調を考えて、正式なお祝いは日を改めてということになったから、とりあえず、出生届を出すまでに考えればいいのだが。

 決まってないと、不便だよな、と思いながら、雅喜は目を覚ました赤子を抱き上げようとして、やめた。

 まだ帰宅してから、手を洗ってなかったからだ。

 真湖がすぐに子どもを抱き上げ、あやし始めるのを見ながら、洗面所へと向かう。

「ああ、そういえば、今日、羽村の見合い相手を見たぞ」
と言うと、

「えっ? 羽村さん、見合いするんですか?」
と真湖が訊いてくる。

「本人嫌がってるが、俺はあの悪党も、ついに年貢の納め時な感じがしているぞ」
と言って、鏡を見ながら笑う。

 真湖がリビングで、
「悪党って……」
と呟き、苦笑いしているようだった。



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