課長の瞳で凍死します ~羽村の受難~
「ほら、なにかあったかいもの、持ってきてあげるから」
と言って、羽村は部屋に入る。

 雪乃をソファに降ろし、ファンヒーターをつけようとしたが、灯油が切れていた。

「しょうがないなあ。
 エアコンにするか」
と言ったが、こんな寒い日は、エアコンではなかなか効かない。

「寒いですね~……」

 背中から降りて、自分の体温から離れて寒くなったのか。

 ソファに転がされた雪乃は、起き上がりこぼしのように、すぐさま起き上がりながら、ぼんやりとそんなことを呟く。

「なにかこう――」
とようやく明るくなったばかりの部屋を見回しながら、雪乃は言う。

「家に火をつけたくなるような寒さですね」

「……灯油買ってくるよ」 

 部屋に火をつけられてはたまらない、と思い、羽村は言った。
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