課長の瞳で凍死します ~羽村の受難~
 そこで、雪乃が、
「それにしても、申し訳ございません。
 おうちにまでお邪魔してしまいまして」
と多少、正気に返ったのか、謝ってくるので、キッチンに向かいながら、

「いや……僕の後付け回したりしてた人が、なに言ってんの」

 おかしな遠慮しないで、と言うと、

「でも、あれは公道ですから。
 たまたま道を歩いていたら、羽村さんが前にいらした、くらいの感じですけど。

 此処は羽村さんのおうちですから」
と雪乃は言う。

 なんだろう。
 その犯罪者ストーカーの言い訳みたいなの、と思いながら、

「じゃ、珈琲淹れてあげるから。
 それ飲んだら、帰って。

 珈琲、飲めるよね?」
と雪乃に確認した。

 見合いするくらい大人なのはわかっているのだが、純粋すぎるところがあるせいか。

 なんとなく子どものように思えて、つい、そう訊いてしまうと、雪乃は頷いたあとで、

「私、お手伝いしましょうか?」
と訊いてきた。

「いや、もれなく、なにか割りそうだから、じっとしてて……」
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