課長の瞳で凍死します ~羽村の受難~
ちょっと後悔しそうだ ~真湖&雅喜~



「はっ、赤ちゃんっ」
と真湖は飛び起きた。

 赤ん坊が泣いたので、あやしながら、家の中を歩いていて、ちょうど、ベッドのところで疲れて一緒に寝てしまったのだ。

 だが、薄暗い部屋の中、ベッドに赤ちゃんは居ない。

 落ちたっ!?
と下を見るが、そこにも居ない。

 わずかに寝室の扉が開いていて、細くリビングの明かりが差し込んでいる。

 まさか、這って出て行ったとかっ!? と、

『いやいや、真湖りん。
 産まれて一週間だよ』
と三上や羽村に言われそうなことを思う。

「赤ちゃんっ」
と叫んで飛び出すと、スーツ姿のまま赤ん坊を抱いた雅喜がリビングの大きな窓から赤子に夜景を見せていた。

「ほーら、……」
と言っているのが聞こえてきた。

 なにか名前を言っているのではっ?
と真湖は耳を澄ませる。



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