幼な妻だって一生懸命なんです!


あたりが薄暗くなり、一日が終わる事を告げていた。

「何もできなかった」

普段通りの生活も、要さんとの話し合いも、何もできない罪悪感。
朝はそんなことすら考えられなかったのだから、少しずつ体は回復し始めたのだろう。

「お腹空いた」

午前中、祖母が作ってくれたおかゆを食べたきりだ。
水分も寝ている間は取らずにいたから喉もカラカラ。
ゆっくりと上半身を起こす。

気持ちはだいぶ落ち着いた。
昨日は混乱していた頭も、今は考えられるようになった。
それでも要さんと会うまでは複雑な思いは消えない。
聞きたいことがたくさんある。
それを聞いたら、私たちは何か変わってしまうかもしれない。
それでもきちんと彼と向き合うと決めていた。

発熱していた間、うつらうつらと意識が遠のいたり戻ったりしていた。
その間、いつも頭の中にあるのは要さんのことだった。
彼がどんな思いだったのか、これを考えたところで彼にしかわからないこと。
私はそれに気がついた時に、自分はどうしたいかはっきりわかった。


ふと、今、祖母はどうしてるんだろうと気になる。


「よいしょ」

一日中寝ていた体を起こすのに、そんな言葉が口から自然と出て、自分で笑ってしまった。
髪はボサボサ、唇はカサカサ、肌はボロボロ。
こんな姿、要さんに見せたくないな。
やっぱり考える先はいつも彼のことだった。

ゆっくりと立ち上がり、部屋を出るために襖を静かに開けた。
すると祖母が誰かと話す声が耳に届く。

幻聴だろうか?
私が要さんのことを考えすぎていたからだろうか?

いや、違う。
それは紛れもなく彼の声だった。
居間の方から二人の話し声が聞こえる。
私が部屋を出る時に開けた襖の音は聞こえていなかったようで、話は途切れることなく続いていた。








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