@YUMI KO
エマは車内流れる大好きなマーチに合わせて歌を歌っている。


「そうですよね……」


それと同じように、家で見ているだけじゃわからない。


「どうしたの?」


いつの間にか深刻な顔になってしまっていたようで、理香先生が振り向いて聞いて来た。


「いえ、別に……」


そう返事をした時だった。


不意に、コツンッと足になにかがぶつかった。


青信号になって動き出す車内、あたしは上半身を屈めて足元を確認した。


暗い足元で何かがキラリと光って見えた。


手を伸ばしてみると、それがスマホであることがわかった。


光って見えたのはスマホの画面だったみたいだ。


確認してると3年ほど前に発売された、古い機種だ。


「先生、スマホが――」


『落ちていましたよ』と言いかけて、あたしは口を閉じた。


今車内に流れている音楽は、先生のスマホを経由しているものだったからだ。

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