@YUMI KO
「財布もスマホも鍵も置いたままだった。それなのに、玄関の鍵は閉まっていたんだよ」


お父さんの言葉にあたしは「え?」と、首を傾げた。


部屋に鍵を置いたままいなくなったのに、玄関の鍵が締まっていたとはどういうことだろう?


「理香先生は、部屋の窓から出て行ったの?」


きっと、理香先生の部屋に入ったことがあるのだろう。


穂香が聞く。


「いいえ。窓の鍵も閉まっていたのよ」


お母さんの言葉にあたしたち3人は目を見交わせた。


理香先生は夜中の内に、鍵を持たずにいなくなった。


それなのにどこの鍵もちゃんと閉まっていたとは、一体どういうことなんだろう?


だんだん頭が混乱してきた。


「理香の部屋を見てみる?」


お母さんにそう言われて、あたしたちは大きく頷いたのだった。

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