極上旦那様ととろ甘契約結婚
ずっとお父様は海外赴任で、お母様がなくなった時も面倒な手続きなどは修吾さんがしたのだと、以前に少し聞いたことがある。

「それに春から社会人になったんでしょう?それなら心も体も忙しくて当然です」

学生と社会人は負う責任が大きく違う。いかに優秀な修吾さんだって入社したての時は戸惑う事も難しい事も多かったろう。

だけど、目の前の修吾さんはやはり緩く首を横に振る。

「ホント、成美は俺に甘いな。でも忙しさに逃げたのは事実だよ。実際、忙しさなんてものはどうとでもなるんだし」

「ーーーならないですよ。今だって」

「あ……それは、ごめん」

聞き捨てならない言葉に、点滴後に貼ってあるガーゼをじっとりと見つめながら言えば、失言に気付いた修吾さんが焦ったような声を出した。

今の状況でそんな言葉を言うなんて。ホント、過労を甘く見ないで欲しい。
私みたいに記憶を無くしてしまう事だってあるんだし、何よりあんな修吾さんの姿を二度と見たくない。

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