極上旦那様ととろ甘契約結婚
軽く返事をして、廊下に出てから、はぁぁっと大きく息を吐いた。意識していつもと変わらない返事をしたが、私の心臓はドクドクと激しい音を立てている。

「はっ恥ずかしい……」

会話のターンが来るたびにどんどん気恥ずかしくなって、顔が熱くなって、視線が合わせられなくなって。
ちらちらと修吾さんの様子を伺って、相手も自分と同じ反応なのか確認したくなって、またそれが恥ずかしくなって。

最後にはほとんど相手を見れなかったなんて、我ながら、中学生かっ!とツッコミたくなる不器用さだ。

それでも、そんな不器用な会話が不快じゃなくて。羞恥に熱くなっていた頬が、今度はニマニマと笑むのを両手で押さえながら歩いていた廊下で「あっ」と立ち止まった。

さっきの会話の中で引っ掛かったのだ。どこかで聞いた懐かしいフレーズだ、と。

「あれ?なんだっけ……」

こみ上げてきたこそばゆい嬉しさで、さっき感じたはずの違和感を見失ってしまった。

どうやら仕事を辞めてここで暮らし始めた一ヶ月で、私の脳味噌は随分とポンコツになってしまったらしい。

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