君の描いたクローバー〜遠く離れても、きっと〜
「それってあの彼氏?」

ニヤニヤしながら友達が訊いてくる。私は頰を赤く染め、こくりと頷いた。

「小さい頃の工くんを描いたの。小さい頃から工くんは野球が好きだったから……」

絵を描き始めた頃、工くんをうまく描けるようになりたいと彼をよく観察した。そしてそのたびに自分の体を憎んだのだ。彼の隣で走ることができない病気を持ったこの体を、生まれて初めて憎いと思った。

過去のことを思い出しながら、下塗りしたところを塗り重ねていく。油絵は何度も塗り重ねをする。絵の具が乾くのが遅いため、何度も塗り直したり拭き取ったりすることができる。初心者が絵を描くなら油絵をオススメするよ!

集中して油絵を描いていると、後輩たちが絵を描く手を止めて何かを話し始めた。

「ねえ!今度、隣街の美術館で世界の名画コレクションっていうのをやるんだって!」

「名画っていってもレプリカでしょ?」

「まあ、そうなんだけど……。でも一つの美術館に世界中の名画が集まるんだよ!!すごくない?」
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