夫婦はじめ~契約結婚ですが、冷徹社長に溺愛されました~
 どんなものになるか、まったく想像できない。

「したいかしたくないかで言ったら……してみたいです」
「次の日曜でいいな」
「えっ、本当にするんですか?」
「俺もしてみたいからな」

(……なんで?)

 考えを読み取りやすい人ではなかったけれど、今まで以上に理解を超えている。

(進さんにまた聞かれても答えられるように、かな?)

 そう結論付けて、そのための練習ならばちゃんと付き合うべきだろうと判断する。

「分かりました。夫婦の実戦訓練ですね」
「まあ……そういうことになるのか」
「頑張ります」
「ああ」

 なんとなく春臣さんが釈然としていないように見えた。
 でも、それを気にしている場合ではない。

(デートだって)

 きっと深い意味ではないのに、期待している自分がいる。

(私、春臣さんと過ごすのは嫌じゃないのかもしれない)

 男性に感じていた抵抗をこの人にだけは感じない。
 だからこんなに楽しみに感じてしまうのだろう。
 それに、また珍しい表情を見られるかもしれない。
 デートともなれば知らない姿を見られる可能性もあるだろうし、お互いのことを話す時間だって少なくはないはずだ。

(もっと春臣さんのことを知りたい)

 夫婦になるのなら、そうするべきなのだと思っていた。
 今もその考えは変わらない。
 けれど、『義務』ではなく自分の願望も混ざり始めている気がした。
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