夫婦はじめ~契約結婚ですが、冷徹社長に溺愛されました~
 舌で唇を割られる。驚いた私の顎を手で固定したまま、奥へ逃げ込もうとした私の舌に絡めてきた。

「んんー、んっ」

 胸を軽く叩いて抗議するけれど許してくれない。
 それは、私の身体から力が抜けるまで続けられた。

「……っふ、は」

 ようやく解放された頃にはすっかり息が上がってしまう。
 春臣さんはというと、平然としていた。

「外ですることじゃないです……」
「今、することではあっただろ」

 足に力が入らない。
 悔しいことに、私をこんな風にした本人に縋らなくては立てなかった。

「今度は邪魔が入らなかったな」

 笑いながら言われて、すぐに理解する。

「もし、また進さんから電話が来たらどうするんですか?」
「電源を切る」
「……怒られますよ」
「プロポーズの方が大事だ」

 かすめるようなキスをされる。
 そして、抱き締められた。

「今夜はこのまま家に来い。帰るな」
「……はい」

 キスは耳にも落ちた。
 もともと遠慮なく触れてくる人だとは思っていたけれど、どうもエスカレートしている気がしてならない。

「離婚するって言われたから、もうとっくに届を出したのかと思っていました」
「お前を問題から引き離さなければならないと思ったんだ。俺から離れれば、海理も理解する」

 部外者、と言われたことを思い出す。
 妻でもなく秘書でもなくなった私は――現にこれまで事件にまったく関わらなかった。

「海理も謝りたがっていた。俺は許していないが、謝罪だけは聞いてやってくれ」
「春臣さんも許してあげてください」
「しばらくは無理だな」
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