こんなにも愛しているのに〜それから
あの日
西澤くんからしたら
あんなことがあった私たちなのに
どの面下げて
会いに来たのか
という思いでいっぱいだったろう。

終始
不機嫌そうにしていた。

それでも
私は10年ぶりに会う西澤くんに
心ときめいたし
まだ
彼のことを好きな自分に気づいた。
自分勝手な思いだ。

10年して
やっと気づいた。
なんて
独りよがりな酷いことをしていたのだろう。

西澤くんが語る
あの日の違和感を
本当は
背筋が凍るような思いで聞いていた。

「飲みのものに何か薬を、、、」

私は答えなかった。
そうまでして思いを遂げた人は
私に氷のような瞳を向けるだけで
奥さんにした反撃も
絶対に許さないという
口調で詰られた。

私は
こんなにも好きなのに
私のことを邪険にして
私たちの間にあったことを
なかったことにまでして
西澤さんに思われている奥さんが
憎かった。
八つ当たりでしかないのに。

でも
その数日後に
奥さんが死産をしたということを
聞いたときに
私のせいだ。
と瞬間思った。

独りよがりの思いで
私はこの夫婦を
地獄へ引き摺り込んだかのように
苦しめたのだ。

目が覚めた。

長い間
自分で自分を捉えていた地下牢から
この日、やっと這い出た
気がした。

きっと
私が謝罪の言葉を1万回並べようと
それを受ける方は
また苦痛でしかないだろう。
それより
西澤くんが近づくのを許してくれないだろう。

人を羨んだり憎んだりすることは
ちょっとしたことで
最も簡単にできてしまうものだが、
人から羨まれたり憎まれたりと
憎悪されるのは
こんなにも辛いものか。

あの日の西澤くんの目には
私は醜い女の塊としか
映っていなかったと思う。

すっかり
心が弱って
私は帰宅した。
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