こんなにも愛しているのに〜それから

衝撃

「おかしいか。。。」

彼女は私の言葉を繰り返すと
ふっと笑った。

「奥さん、馬鹿みたいな専務とお幸せに。」

唐突に彼女はそう言った。

「私、帰ります。」

まるで
何事もなかったかのように
彼女は徐に
立ち上がった。

「ごめんなさい。
このまま帰られては困る。
もし
これを最後ということだったら、今後一切
私たちに関わらないと、
誓約書を書いて欲しい。

でも
子供が生まれたら、則文の責任もあるし、
どうしたいかも
あなたの要望を言って欲しい。」

「えっ?」

彼女が意外そうに言った。

「私たちはきちんとしておきたいの。
今回のことで
則文の責任もあるし
私はあなたに謝罪を
求めることもできると思う。

きちんとしておかないと、これから先
やっぱり遺恨が残ると思うの。」

私と西澤くんが引きずってきた
この10年を省みて
そう思う。

思い直したように
彼女は再び私たちの前に座った。

「私は優しい専務が旦那さんで、
その人に私は守られて、愛されて、
子供ができて、
家族になれたらいいなぁって、
ひと夜の夢みたいに思っていたんです。
夢でよかったのに、
専務が私をひとつも好きになって
くれないから、、、子供ができたと言っても
少しも喜んでもくれないし、
愛情のかけらも見せてくれないから
ちょっと意地悪をしました。」

私は彼女の言葉に驚いた。

「それって、
妊娠って、、」

「ふふ、、、
初めて慌てられましたね。
よかった。
いいかっこしいの、
冷たい女かと思っていたから、
ちゃんと、焦ったりもするんですね。

妊娠していますよ。
ほら、
母子手帳も持っています。」

バッグから母子手帳を取り出して、
私たちに見せた。

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