離婚前提。クールな社長と契約妻のとろ甘新婚生活

「おはよう」


顔を洗ってキッチンへ行くと、利一と妻の真奈加(まなか)は仲良く一緒に朝食を作っていた。
今日の玉子焼きは甘めにしようか、それともチーズインのオムレツにしようかと楽しそうだ。

物心がついたときに母親が亡くなっていたため、そういった光景は百々花には目新しい。父親をとられて寂しいといった気持ちにならないのは、百々花が大人になったのも大きいが、これまでずっと愛情を注がれ何不自由なく育ててもらったおかげだろう。


「おはよう。百々花さん」


真奈加が百々花に気づき、振り返って花開くように優しく笑いかける。
十六歳で出産したものの相手の男に逃げられ、それからずっとシングルマザーで生きてきたというのに、苦労をいっさい感じさせない明るい顔だ。

利一によると、いつもよく笑い、職場でも輪の中心にいる人だったらしい。明るい性格に助けられていたそうだ。

それになにより美人。肌が透き通るくらいに色白で、美しい二重瞼に小ぶりな唇。ふんわりとさせたボブスタイルが若々しい。百々花と並んでも十歳離れているようには見えないだろう。
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