離婚前提。クールな社長と契約妻のとろ甘新婚生活

脳内でふたりの百々花が幾度も同じやり取りを繰り返す。気持ちを落ち着けようと、フライングでコーヒーを淹れていると、いよいよ千景が起きてきた。


「百々花、おはよう」


昨夜はなにもなかったかのような普通のトーンだった。

もしかして、あのキスは幻覚だったの？

そう思いたくなるほどの平静。すでにワイシャツに着替え、身支度が完了している。すぐにでも出勤できそうだ。


「おはようございます。あっ、あの、コーヒー飲みますか？」


彼の登場で心が惑う。手もとが狂い、コーヒーをカップに注ぐつもりがキッチンカウンターに広がっていく。


「あっ！」
「大丈夫か？」


千景が百々花のもとにやって来て素早く布巾で拭う。