離婚前提。クールな社長と契約妻のとろ甘新婚生活

「フェアが終わったら飲み会ですよ?」
「楽しみにしてますね」


念押しをする田原のうしろから千景が現れた。

ここへ来ると知らされていなかったため鼓動が乱れる。いや、知らなかったからではない。千景と一線を越えてからの百々花は、彼の顔を見るだけでどうしようもなく胸が苦しくなる。
気持ちを自覚しても、届かない想いに身を焦がすばかりなのだ。

あの夜以降、寝る前のキスは欠かさずにあるものの、身体は重ねていない。求められれば、きっと百々花は尻尾を振って応じるだろう。そこに愛がないと知っていても。

千景が誘わないのは、この前の夜をアクシデント同様と割りきっているから。いくら夫婦らしくするといっても、あの行為は行き過ぎと考えているのだろう。
そして、一度抱いたからといって自惚れては困るとも。


「田原、神谷さんを誘って浮かれるくらい余裕と思っていいんだな」
「しゃ、社長!」


いきなり背後から声をかけられた田原が飛び上がる。
千景は隙のない、仕事モードの厳しい表情で田原を見た。
< 199 / 301 >

この作品をシェア

pagetop