離婚前提。クールな社長と契約妻のとろ甘新婚生活

ベッド以外の家具や生活感のない部屋から考えると、ほかに思い当たる場所がない。高い天井ではシーリングファンが回っていた。

百々花が泥酔したため、愛華が飲んでいたホテルの部屋にそのまま連れてきたのかもしれない。たまには奮発してスイートにでも泊まろう!なんて盛り上がったのだろう。
だとすれば、愛華はシャワーでも浴びているのか。

よくよく自分を見てみれば、昨日着ていた洋服のまま。カットソーはよれよれ、膝丈のスカートはしわくちゃ状態でめくれ上がっていた。

そそくさと裾を直しつつベッドから降りる。両足をフロアについた途端、くらっと目眩がした。〝俺はここにまだいるぞ〟と、アルコールが身体の中で主張しているようだ。

ベッドルームにあった大きな鏡に映った自分を見て、あまりの惨状に目を覆いたくなる。
長い髪はボサボサ、かろうじて残っているメイクもボロボロ。ただひとつのチャームポイントである大きな目は、飲み過ぎのためか腫れぼったい。

ひどい顔……。

そこから目を逸らし、おぼつかない足取りでベッドルームを出て、勘を頼りに歩を進める。
さすがはスイートルーム。廊下は長いし、センスの良さを感じさせる抽象画も飾られている。


「愛華? どこにいるのー?」

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