恋はポテトと一緒に落ちてくる
柚子との再会
「おい、タケ、電話鳴ってない?」

俺、藤川 翔は、幼馴染のタケに誘われて夏祭りに来た。

なんでも、タケは、3日前に彼女に距離を置こうと言われたらしい。

俺が盆休みで帰省中なことをSNSで見て、今朝、誘ってきた。

男二人で夏祭りってどうなんだ?とも思ったが、落ち込むタケを見るに見かねてやってきた。

「あ、マユからだ!」

タケは慌てて電話に出る。

夏祭りの雑踏がうるさいのか、タケは人混みを離れて路地に入った。

どうするかな…
離れると逸れそうだけど、揉めてる彼女との電話は聞かれたくないだろうし…

俺はその場で、待つことにした。

待つこと3分。

タケは満面の笑みで戻ってきた。

「翔、ごめん!
マユが会いたいって、やり直したいって
言ってるから、俺、帰るわ。
悪い、今度また埋め合わせするから。」

そう言うと、タケは手を振ってあっという間に帰っていった。

まぁ、気持ちは分からないでもない。

だけど、夏祭りに男一人で残された俺の身にもなれよ。

こういう所は、浴衣姿の彼女と来てこそ、楽しいものだろ。

はぁ…
俺も帰るか…

俺が足を止めて、人混みの中、左に一歩踏み出した時、

ドンッ!!

という衝撃と共に、何かが降ってきた。

え? 何だ、これ!? ポテト?

俺が頭から浴びたのは、露店で売ってるフライドポテトらしい。

「あ! すみません!」

ぶつかってきたのは、浴衣を着た女性。

女性は、ぺこりと頭を下げて、そのまま走り出す。

「真菜! 待って! 走ると危ないから!!」

女性の視線の先には、小さな女の子。

まぁ、あれはしょうがないな。
子供が迷子になっても困るし。

ふと見ると、地面にはポテトと一緒に、水色のかわいらしいかんざしが落ちていた。

これ、彼女の…?

俺は、かんざしを拾って、彼女を追いかける。

「あの、すみません。」

俺は、綿菓子の屋台の前で彼女に声を掛けた。
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