いきなり婚─目覚めたら人の妻?!─

航太が浮気しているなんて、できれば知りたくなかった。

だけど私は知ってしまった。

嘘をつかれたことも浮気されていたことも悔しくて悲しいはずなのに、気持ちがまだ追い付いていないのか涙も出ない。

私は航太を信じて待とうと思っていたのだから、単なる遊びだろうが気の迷いだろうが、浮気は許せない。

航太を問い詰めて私から別れを切り出すべきか。

だけど私ももういい歳だし、別の人を見つけてお互いを知って信頼関係を築いて……と言うプロセスをたどって結婚する頃には、何歳になっているかわからない。

やっぱり航太が戻ってくる意思があるなら、一時の気の迷いだと目をつぶって何も知らないふりをするべきなのか。

一体どれが正解なんだろう？

そんなことを思いながら目を閉じると、瞬く間に眠りの縁に誘われた。


薄れていく意識の中で、少しかすれた甘い声が聞こえた。

『無理して笑わなくていい。大人だって悲しいときは泣けばいいんだ。真央(まお)自身が今の気持ちを受け入れないと、一歩も前には進めないよ』

夢の中で私の髪を撫でながら優しく抱きしめてくれたのは誰だろう？