いきなり婚─目覚めたら人の妻?!─
「おはよう、小柴さん」

振り返って顔を上げると、安藤部長がお土産もののお菓子らしき箱を持って立っていた。

気まずいけれど露骨に目をそらすとまた機嫌を損ねそうなので、ネクタイの辺りを見る。

「おはようございます」

「これ、昨日の出張のお土産。チームで一箱ずつ」

「ありがとうございます」

すぐそばに優花も荒木さんもいるんだから、わざわざ私に渡さなくてもいいのに。

そんなことを考えながらお菓子を受け取ると、安藤部長は私のデスクの端のブライダル情報誌を手に取り、パラパラとページをめくった。

「結婚式か……。ウエディングドレスもいいけど、こうして見ると白無垢もなかなかいいな」

安藤部長の妄想の中では、誰が花嫁衣装を着ているんだろう。

現実では叶わなくても、妄想の中でくらいは本当に好きな人と結婚式を挙げているのかな。

「結婚のご予定でも?」

私と離婚しない限り安藤部長があの人とは結婚できないとわかっているのに、わざと嫌味なことを尋ねた。

安藤部長はほんの少し眉をひそめる。

「そうだな。幸せな結婚生活には憧れる。小柴さんは?式を挙げるなら洋装と和装、どっちがいい?」

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