いきなり婚─目覚めたら人の妻?!─
「余計なことではないだろ?創に任せてるといつまでもウダウダしそうだし、大事なことだから俺から小柴に教えてやる。本当は上田部長の後任は俺になるはずだったのに、創が営業部に戻りたいがために、人事部を使ってねじ込んできたんだ」

「えっ、そうなんですか?!」

あんなに大きな会社の人事を自在に操れる安藤部長って、一体何者?

「それともうひとつ……。創の初恋は新入社員のときだ」

「雅也!」

「相手は見知らぬ土地で出会った高校生くらいの女の子だ。そこで会ったことは一度しかないんだけどな。こいつはそのあとも、見かけによらず片想いばっかりしてる」

「頼むからもう勘弁してくれ……」

安藤部長がガックリとうなだれる姿を見て、池崎課長はご満悦のようだ。

「俺が小柴に教えてやれるのはここまでだ。あとは創から詳しく聞いてくれ」

「はい……わかりました……」

バーで会ったのが初対面ではなかったことや、人事をねじ曲げたことは重要かと思うけど、初恋や片想いの話はそんなに大事なことかな?

私が初恋は中2のときだったと話したときには『遅めの初恋』と言っていたのに、そう言った本人はもっと大人の社会人になってから初恋を経験したらしい。

重要ではなくてもなんとなく気になる。

いつも私ばかり自分のことを話していたけど、次は私が安藤部長の話を聞くターンが回ってきたようだ。


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