いきなり婚─目覚めたら人の妻?!─
食事を終えて店を出ると、創さんは私の手をそっと握った。

いつもは人目を気にして手を繋いだりはしないけど、もう時間も遅いことだし会社の人たちには会わないだろうから、そのまま手を繋いで帰ることにした。

触れ合った指先から伝わるぬくもりが心地よくて、だけどほんの少し照れくさくて、初めてデートをしたときのように胸がドキドキする。

「真央の手は小さいな」

「創さんの手が大きいんですよ」

「そうか?」

他愛ない話をしながらゆっくりと家路をたどった。

二人で同じ道を歩き、同じ月を見て、同じ場所に帰り、同じ床について一日を終える。

創さんの腕の中で、ずっとこんな風に穏やかな気持ちで創さんと一緒にいられたら、他には何も要らないくらい幸せだと思いながら眠りについた。



< 621 / 991 >

この作品をシェア

pagetop