いきなり婚─目覚めたら人の妻?!─
誰だろう、知り合いかな?

だけどその人が誰なのかが思い出せない。

もしかして私ではなく別の人に手を振っているのかも?

そう思ったけれど、周りにそれらしい人はいないから、おそらく私に手を振っているんだと思う。

その人は急ぎ足で近付いてきて、ニコニコ笑いながら両手で私の手を取った。

「こんにちは」

「こ……こんにちは……」

「またお会いできて良かったわ」

とりあえず挨拶だけはしたものの、私にはそう言われる意味がさっぱりわからない。

私はまったく覚えていないけれど、以前にどこかで会ったことがあるようだ。

『どちら様ですか?』とか、『以前にどこかでお会いしましたか?』なんて尋ねたら失礼だろうか。

なんとか思い出そうと思い、その人のことをまじまじと眺める。

雰囲気、仕草、佇まい、どれを取ってもやわらかく、とても上品な年配の女性だ。

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