いきなり婚─目覚めたら人の妻?!─
安藤部長の綺麗な顔がさらに迫ってくる。

これはまずい……!

「ええっ?!ちょっと待って……!」

「もう遅い」

有無を言わさず両手で頭を引き寄せられた。

必死で目をそらすと、安藤部長の口元のホクロが私の唇に近付いて来るのが視界に入る。

もうダメだ……!!

観念してギュッと強く目を閉じると、額に柔らかいものが触れた。

「……え……?」

おそるおそるまぶたを開くと、安藤部長はおかしそうに笑いをこらえて、私の頭をポンポンと軽く叩いた。

「今日はこれくらいで勘弁しといてやる。次間違えたらマジで唇にキスするからな」

「もう間違えませんから!」

「まぁ、俺はいつでも大歓迎だけどな」

安藤部長はそう言い残し、イタズラっぽい笑みを浮かべて帰っていった。

一人になった部屋の中で、私は一気に脱力してその場にしゃがみこんだ。

な……なんだ、今の……?

不意打ちのキスに驚き、私の心臓が大暴走している。

あんな人と一緒に暮らして、私の心臓がもつのかが心配になってきた。

私のことを本気で好きでもないくせに、無駄にドキドキさせないで欲しい。

結婚したと言っても、そこに愛なんてものはないんだから。


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