永遠の愛を君に…
「この子は、(まこと)
来週、一歳になるの。」

桃香は、俺の90度隣のベビーチェアに座ってストローマグを両手で掴み、麦茶を飲んでいる小さな男の子を指して言った。

俺はさっき保育園に迎えに行き、後部座席のチャイルドシートにこの子を乗せるのを見た時からよぎっていた考えを口にする。

「もしかして、この子… 」

でも、全部言う前に、桃香が遮った。

「誠は、私の子。私ひとりの子。
だから、優くんは気にしないで 」

桃香はやっぱり穏やかに微笑んでいる。

「いや、そんなわけないだろ!
俺の子だよな?
なんで言わなかったんだよ!」

「ふぇ…… 」

俺が少し声を荒げると、麦茶を飲んでいた誠がくしゃっと泣き出しそうな顔をした。

「あ、ごめん。え、あの、どうしよう?」

俺が困って狼狽(うろた)えると、桃香は笑って立ち上がり、誠を抱き上げた。

「大丈夫よ。
この子、男の人の声を聞き慣れてない
から、怖かったのよ。」

桃香は誠を揺らしながらあやしている。

「俺、あの時、桃香が妊娠してるって
知ってたら、留学なんてしなかった。
二人で誠を育てたかった。」

そう言って俺は、半べその誠の頭を撫でる。

「うん。優くんならそう言うと思ってた。
だから、言わなかったの。
優くんには、やるべきことがあって、
邪魔したくなかったし、この子を
諦めることもできなかったから。
だから、これでいいの。
誠は、私が一人で育てるから、優くんは
気にしないで、忘れて。」
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