副社長の初めての相手は誰?

 抱きしめた絢は、見かけよりずっと痩せていた。


「お父さん、私の事施設に入れてもいいよ」

「そんな事するわけないだろう? 」

「だって、お父さんが苦しんでいるのはもう嫌なの。私がいなかったら、お父さんはあの人と離れる事が出来るでしょう? 」

「お前が居ても、離れる事はできるよ。だから、そんな事言うな」


 絢はじっと優輝を見つめた。


「ねぇお父さん。お母さんが来なかった? 」

「お母さん? 」

「そう、私の本当のお母さん。とっても綺麗な人で、ちょっと悲しい目をしているの。でもね、とっても澄んだ綺麗な目をしているよ。背も高くて、女優さんみたいに素敵な人だよ」


 優輝は驚いて優を見た。

 
 優も驚いていた。

 絢には何も話していない。

 だが、会っていないな希歩の容姿を全て当ててしまった。

 しかも「お母さん」と言っている…。


「お父さん。お母さん、もしかしてお父さんには会いたがらないかもしれないね」

「どうして? 」

「だって…お母さんの事、すごく傷つけだでしょう? 」


 ニコッとしていた絢が、急にちょっと怖い目をして優輝を見た。


「お母さんがすごく悲しくて、一回、死んじゃいそうになったのを私が止めたの。「まだ死なないで、生きていて」って…。それで、お母さんのお父さんが、助けてくれたんだよ」


 どゆう事なのか優輝にも優にも判らなかった。

 だが、絢の目は嘘は言っていない。

 まるで全て知っているようだ。


「私、お母さんの所に行くよ。だってあの人に、これ以上…殴られたくないから…」


 と、震える声で絢が言った。


「絢、やっぱりこの傷は春美さんがやっていたんだね? 」


 絢は小さく頷いた。
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