副社長の初めての相手は誰?


 テーブルの上に書類を置くと、希歩は少し辛そうな目をした。


「その前に。謝罪をさせて頂けないでしょうか? 」

「謝罪とは、私の娘をずっと隠していた事に対してですか? 」

「それも謝らなければならない事ですが。その前にどうしても、貴女を深く傷つけてしまった事をお詫びしなくてはなりません」

「…それは、先日も言いましたが。何の事なのか、分かりかねますので…」


 優は鞄から写真を一枚取り出して、テーブルの上に置いた。

 その写真を見ると、希歩はちょっと怯んだ目をした。

 写真には少し若い優輝と、髪の長い可愛い女性が写っている。

 面長の輪郭にパッチリした目、口元もプルッとして魅力的な女性。

 2人もとても幸せそうに笑っている。

 
「お話しがそれてしまい、申し訳ないのですが。この事を、ちゃんと話さなくては。何も変わらないと思うのです」

「…どうゆう事でしょうか? 」


 写真を見て、優は希歩を見つめた。


「この写真は、息子の優輝が10年前に。結婚を約束していた女性です。この方も、弁護士でとても優秀な人でした。ですが、とある事がありこの方は姿を消してしまったのです。その時、私も私の妻もかなり動揺してしまい、思ってもいない事を口にしてしまい。この方を、とても深く傷つけてしまいました」

「それが、私と何の関係があると言うのですか? 」


 優は希歩を見てそっと微笑んだ。


「貴女の目を見た時、胸がキュンとなりました。…どんなに姿が変わったとしても、魂までは変わりませんから…」


 何を言い出すの? まさか…気づいたの? 

 ちょっと恐る恐る、希歩は優を見た。


「希歩さん。…本当に、申し訳なかった…」


 深く頭を下げる優…。

 込みあがってくる思いが溢れるのを、希歩は必死で抑えた。

 今更謝られても…。

 そう思う中、どこかで胸が痛んで。

 優を責める気持ちにはなれなかった。
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